着物の着付け、実はそんなに難しくない?自分で着る方法を新宿の老舗呉服店の女将が解説
着物の着付けは、洋服を着るのとは異なり、特有の技術と手順が必要です。
着物を正確に着付ける方法としては、着付け教室に入会して熟練した着付け師の指導を受ける方法が知られています。
ですが、技術と手順さえ覚えてしまえば、自分で着物を着ることはそんなに難しいことではありません。
このページでは、自分で着物を着たい人に向けて、着付けの基本的な方法をステップごとに分かりやすく解説しています。
ステップ1
準備
まず、着物セット一式を準備します。
<基本セット>
- 着物
- 長襦袢(ながじゅばん)
- 帯(おび)
- 帯揚げ(おびあげ)
- 帯締め(おびじめ)
- 草履(ぞうり)
<下着類>
- 足袋(たび)
- 肌着と裾除け(すそよけ)
- 帯板(おびいた)
※後述する前結び用の板があるとなお良いです。
- 帯枕(おびまくら)
- 腰紐3本
また、自分の姿を確認するために、鏡の前で着付けをした方がよいでしょう。
ステップ2
下着の着用
始めに、下着類であります肌着と裾除け(すそよけ)を着用します。
後述する長襦袢(ながじゅばん)の下に着るもので、長襦袢が汚れるのを防ぐ働きがあります。
肌着類は体に巻き付けるタイプの物が多く、留めておく紐のようなものも付いていない場合がほとんどですので、慣れるまでは、腰紐やマジックベルトなどで留めた方が着付けがしやすいかもしれません。
(慣れれば、必ずしも腰紐やマジックベルトは必要ありません。)
次に、長襦袢を着ます。
長襦袢は、洋装でいうところのカットソーのようなインナーウェアのことで、着物の透けを防ぎます。
また、夏物の着物の場合、わざと着物を透かして、長襦袢の地模様の柄と着物の色柄を組み合わせてコーディネートを楽しむことができます。
背中心(せちゅうしん)といって、長襦袢の背中の縫い目を背中の真ん中に合わせたら、左前を上にして体に巻きつけるように着てください。
長襦袢も、肌着、裾除けと同様、特別な加工をしていなければ紐やマジックベルトなどは付いていません。
腰紐やマジックベルト、伊達〆(だてじめ)といった細くて薄い帯を、長襦袢の上から巻いて留めてください。
ここでの紐の結び方は特に決まりはありませんが、蝶結びにする場合が多いです。
ステップ3
着物の着用
次に、着物を広げて、長襦袢と同様、背中心を背中の真ん中に合わせてから身体に巻き付けます。
この場合も長襦袢と同様、左前が上になるように重ねて巻きつけてください。
着物の場合、長襦袢と違う点は、お端折り(おはしょり)という腰のあたりで織り込みを作って、ご自身の身長に合わせて丈の長さを調整する必要があります。
その際に、腰紐等の留め具が2本必要になります。
長さを合わせた段階で1本目の腰紐等を使って腰の上あたりで巻きつけて留めます。
その後、長さがずれないようにしながら、お端折りを奇麗に調えて、その上から2本目の腰紐等を巻きつけて、お端折りが崩れないように固定します。
着物と長襦袢の衿(えり)を調整して、シワやヨレが無いようにして奇麗に整えてください。
ステップ4
帯の結び方(ここがポイント!)
帯は、ステップ1の「準備」で触れた前結び用の「帯板(おびいた)」があると非常に結びやすくなりますので、まず、そちらのご紹介をしますね。
前結び用の帯板は、価格が4000円前後と、普通の帯板(1000円前後)と比べると少々高額にはなりますが、それ以上に、着付ける際に手を後ろに回して引っ張ったりすることなく、また、体の可動域が狭くなっていても楽に安心して着物を着ることができるというメリットがあります。
さて、帯の結び方ですが、今回は九寸名古屋帯を使って解説します。
帯を腰に巻き付ける前に、前述の前結び用の帯板をぐるっと着物の上から巻きつけます。
お端折りを作った数センチ上ぐらいの場所を基準にしてください。
次に帯枕(おびまくら)と帯揚げ(おびあげ)を用意します。
帯枕の中心と帯揚の中心を合わせて、帯揚げで帯枕をすっぽりと包み、中心を輪ゴムなどで留めて、動いたりズレたりしないように固定します。
ここからいよいよ帯を巻いていきます。
名古屋帯の場合、帯の端を50〜60センチほど余らせて、縫い目がある側が上になるように、帯の端の細い部分を上にして、お太鼓側の太い部分を下に反時計周りに巻いて行きます。
この際、ポイント柄の名古屋帯の場合、前の柄が前側の中心になるように合わせる形で帯の端の長さを調整しながら巻いて行きます。
ひと巻きしたら、細い方を結びやすいように結び目になる部分を半分に折りながら、体の前面で半分にした細い部分を太い部分を上にして交差させ、交差させた空間に下から太い太鼓側の部分を上に通し、しっかり結びます。
上に通したお太鼓側を奇麗に整えて、お太鼓の柄の位置などを調整します。
形や柄の位置を整えたら、先ほど用意した帯揚げで巻いた帯枕をお太鼓の中に入れて、後ろに回し、ズレたりしないように仮結びをしておきます。
ここまでできればあと一息です。
今度はお太鼓と「たれ」の形を調整します。
(お太鼓の下側の少し出ている部分を「たれ」といいます。)
帯枕で上の部分を固定して、垂れ下がっているお太鼓を内側に巻き込むように二つ折りにして、最初に結んだ細い部分をお太鼓の輪の中に平べったくして織り込んで中に入れ、形を整えます。
この際、下のたれの部分は、7〜8センチぐらいを目安に出すと美しく見えます。
お太鼓の形が整ったら、今度は帯締めを用いて、お太鼓で作った空間の中に入れ、後ろで仮結びをしておきます。
最後に、着物の上前が崩れないように、必ず「右回り」で帯を前後逆転させて回して行きます。
この時のために、前結び用の帯板があると便利です。
綺麗に前後が調整できたら、帯枕の紐を結んで帯の中に入れ込み、その後帯揚げを同じように中心で結び、帯の中に入れ込みます。
最後に、仮結びしてある帯締めを中心に合わせて結び、両端を帯〆にひっかけて完成です。
以上が、基本的な着物の着付け方法になります。
普段から着物を着慣れていないと、着付けは、一見難しそうで、特別な技術が必要とのイメージを持たれる方が多いかもしれません。
ですが、何度か試して慣れてしまえば、そこまで難しいものでもありません。
とはいえ、着物の種類やシチュエーションによって、着付け方法が異なることもあります。
もしわからないことがあれば、一度、お近くの呉服屋さんに着付けの指導を受けてみることをお勧めします。
もちろん、当店甲州屋呉服店でも本格着物・浴衣の着付け、指導を承っています。 ぜひ、お気軽にご利用くださいね。
あなたが快適な着物生活をお送りできることを心から願っています。
最後までお読みいただきありがとうございました。
着付け動画
「ステップ2」以降の動画になります。
ご参考になさってみてください。
↓ ↓ ↓
【新宿・甲州屋呉服店の詳細はこちら】