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紅花染め(べにばなぞめ)の着物について

大正12年創業、新宿・甲州屋呉服店の三代目社長 志村 賢三(シムラ ケンゾウ)です。

今回のコラムでは、紅花染め(べにばなぞめ)の背景や歴史、特徴、生産方法、入手方法などを解説いたします。

1. 背景について

江戸時代後期、米沢藩上杉家の財政は危機に瀕しており、借入金返済に百数十年を要すると言われておりました。
(当時の大名家の多くも五十歩百歩だったと思われます。)

幕府の政策、中でも参勤交代、賦役(ぶえき)など、さらに形式を重んずる慣習を強要され、気張り続けることが求められていました。

そんな中、上杉 鷹山(うえすぎ ようざん)は、わずか10歳の時に上杉家に養子として入りました。

時が経ち、鷹山が藩主となって以来、殖産振興、質素倹約、開墾、物流交易など、様々な技術導入等を推進しました。

労働力は農民のみならず武士階級も含め、オール米沢藩で総力を挙げての改革の日々を重ねました。

その結果、素材産業型の地域柄だったこの地が、数十年の時を経て、農工業生産、交易などの一大産業立国へと変貌を遂げたのです。

そうした中、北上川流域一帯が一大生産地だった紅花(べにばな)は、最高品質の京紅や着物の染料としても重要な交易品として尊重されるようになりました。

北前船(きたまえぶね)などで大量に物資を運搬できるようになった時節も幸いし、藩財政を潤していったのでした。

かたや、越後の小千谷(おぢや)から優秀な職人を招聘し、紅花紬などの優良な織物の生産を可能にしたのです。

2. 紅花染めとは

 

紅花畑

紅花畑

 

紅花は、エジプト原産のキク科の一年草で、日本には古くはシルクロード経由で中国から輸入されました。

北上川流域一帯の広大な紅花畑では、毎年7月2日に半夏一ッ咲き(はんげひとつさき)と言われる開花にはじまり、それから一斉に花を咲かせます。

紅花を分離処理して「紅花もち」を作っていく過程で黄色の染料が分かれて採取されます。

米沢藩の産業立国実現により、需給バランスが好転し、紅の原料の元となる「紅花もち」が高価取引されるようになっていきました。

 

紅花もち

紅花もち

 

染料の世界では、紅花染めは“紅花百色”と言われるようになり、栗や鉄、鳥梅(うばい)などで媒染(ばいせん)することにより、様々な色を創り出すことができるようになったのです。

『阿波の藍に出羽の紅花』と言われ、草木染の原点として全国的に尊重され、不動の存在感を示すに至りました。

とりわけ、真紅の「紅」を染めるには、紅花染めを十数回繰り返さねばならず、手間と費用がかかる極めて貴重な品でありました。

米沢の紅花紬は媒染された様々な色糸を組み合わせて織られたものであり、明治時代初期まで必需品として、また交易に欠かせない貴重な品として、産業構造の中でも重要な位置を占め、米沢藩の財政の屋台骨の一角を支え続けてきたと言えましょう。

しかしその後、ドイツから化学染料が手に入るようにになってから、その浸透により、徐々に紅花や藍をはじめとした草木染産業が衰退していくことになり、紅花染めも歴史の中に埋没していくことを余儀なくされていきました。

時は流れ、紅花染めが復活の日の目を見たのが、昭和30年頃、地元中学校教師だった鈴木孝男氏と、現在も米沢織の最有力工房の一社として活躍している株式会社新田の現社長、新田源太郎氏の祖父である故新田秀次氏でした。

今に至るまで、多彩な商品群を誇る少量多品種へのこだわりは、米沢織の大きな特徴となっております。

織物の歴史の中で、大量生産、粗製乱造に走り、消滅に至った事例は多々ある中、紅花染め、米沢織は、その発祥の大原則を基本とし、脈々と現在に受け継がれてきたのです。

3. 新宿・甲州屋呉服店について

 

 

当店甲州屋呉服店は、大正12年、新宿の地で創業しました。

和服好きの方や、着物のことでお困りの方に、“老舗の知恵” と “最適な(時には斬新な)方法” で、販売のみならず、お手入れ、着付け、レンタル、お預り等、あらゆる方法の中からピッタリなご提案をしています。

当店にて紅花染めの着物を取り扱っておりますので、ぜひお気軽にお越しくださいませ。

 

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