大人の女性が似合う本格浴衣の買い方・選び方について、新宿の老舗呉服屋が解説
「着たいのは、10代・20代の子が着るような浴衣じゃないのよね…」
「今は通販でも浴衣が買えるようだけど、やっぱり試着してみないと実際のイメージがつかみにくい…」
「本格的な浴衣を作ってみたいけど、どこで買えば間違いないの?」
あなたは、今の自分に似合う浴衣を着たいけど、買い方や選び方に不安があったりお困りになったりしていませんか?
大人の女性が似合う本格浴衣を探すのは、決して難しいことではありません。
大正12年創業、新宿・甲州屋呉服店の四代目。
“新宿通りの若旦那” こと、 志村 郷親(シムラ クニチカ)と申します。
「和服をもっと身近に。」をコンセプトに、情報発信メディア「和服東京」を通じて、世界に誇れる和文化を継承、広めるために、様々な企画をプロデュースするとともに、日々精力的に情報を発信しています。
このページでは、「大人の女性が似合う本格浴衣の買い方・選び方」についてお伝えしようと思います。
1. 大人の女性が似合う本格浴衣の種類と特徴
まず、大人の女性が似合う本格浴衣とは、どのような浴衣なのでしょうか。
それは、10代・20代の女性が街で気軽に買えるような大量生産された既製品の浴衣ではないですよね?
基本的に、大人の女性が似合う本格的な浴衣は、染めや工法が手づくりとなりますので、世の中に大量に出回っていません。
もちろん、型を作って染めるので一点物とまではいきませんが、本格的な浴衣を探せば、あなただけの、オリジナルの浴衣に巡り合うことができます。
1-1. 注染(ちゅうせん)
読んで字のごとく、染料を注いで染める工法の浴衣です。
主に江戸川区、足立区、葛飾区などで製造されている「東京本染ゆかた」に見られる技法になります。
反物に型紙を置き、さらに防染糊(糊を置いた部分が染まらないようになります)を施します。
その上からじょうろで染料を注ぎ、屏風たたみをして圧をかけながらまた型紙を置いて染める、という工法を繰り返して一反の反物に仕上げていきます。
じょうろでたっぷりと染料を注ぐので、生地の裏までしっかり染まっているのが特徴です。
1-2. 長板染め(ながいたぞめ)
長板染めとは、江戸時代の浴衣の製造技術です。
正式名称は、「長板中形染め」(ながいたちゅうがたぞめ)と言います。
6.5mの長い一枚板に生地を張り、大きめの模様が彫られた型紙を用いて、表と裏に別々に糊置きを行い、表裏両面の柄をぴったり合わせて染める技法です。
藍瓶(あいがめ)と呼ばれる、藍の染料が入った瓶(かめ)に数回浸しながら染めることと、裏表両面の柄をぴったりと合わせて染めることで、くっきりとした柄づかいになるのが特徴です。
1-3. 絞り(しぼり)
絞り(しぼり)は、とても人気の高い生地です。
元々は徳川家康が江戸に幕府を開いて間もないころに誕生し、その後、尾張藩の特産品として全国に広まったそうで、そのほとんどが愛知県の有松・鳴海絞りのものになります。
工程としては、まず図案を起こし、小刀などで模様を切り抜いたり穴を空けたりして型紙を作成します。
型紙が出来上がったら、青花紙(あおばながみ)を水に溶いたものを型紙の上から布の模様にしみこませ、括り(くくり)加工を行います。
この括り(くくり)加工が、絞り(しぼり)独特の風合いを生み出しているのです。
最後に、生地から括り(くくり)で使った糸を抜き、絞りの反物が完成します。
糸で強く括って(くくって)染め上げることで、生地が独特の波型に縮んだような風合いとなり、鹿の子等の古典的な柄が楽しめるのが特徴です。
1-4. 引き染(ひきぞめ)
引き染(ひきぞめ)とは、紅梅浴衣(格子状に太い糸を織り込んだ生地に型染めした染物の浴衣)で主に使われる技法です。
長板染め(ながいたぞめ)のように長い板に生地を張り、型紙の上から防染糊を施した後、ヘラで染めて製作します。
もっとも、引き染(ひきぞめ)は、長板染め(ながいたぞめ)のように生地の両面を染めることはありません。
両面染めることがないので、裏地は白のままであることが一番の大きな特徴です。
また、長板染めと異なり、細かい柄のものが多くあります。
2. 大人の女性が似合う本格浴衣の購入方法
では、大人の女性が似合う本格浴衣は、どこで購入すればいいのでしょうか。
2-1. ネット通販
もうすでにあなたは、「浴衣 購入」などと検索して、ネット通販のサイトをチェックされているかもしれませんね。
今はネット通販でも、本格浴衣の注文を受けて仕立てまで行っているお店がいくつか存在します。
メリットは、なんといっても、パソコンやスマホなどのインターネット環境が整っていれば、自宅にいながらでも気軽に注文できるところでしょう。
逆にデメリットは、
・商品の写真がいくら綺麗でも、大なり小なり実物と差異が生じることがある
・仕立て注文の際、自分で採寸しなければならない(採寸方法を間違えてしまう可能性がある)
・そもそもオーダー仕立ての場合でも、サイズのバリエーションが限定されることがある
ことなどがあります。
2-2. 実店舗(街の呉服屋さん)
本格浴衣を購入するときは、ネット通販ではなく、「街の呉服屋さん」といった実店舗で購入するのが今でも主流かと思います。
やはりメリットは、反物の現物をその場で手に取って触れることができることでしょう。
購入する前に反物の肌触りを確認できますし、自分と反物を鏡に映して似合うかどうかを確認することができます。
また、とても重要なメリットがもう一つあります。
それは、街の呉服屋さんなら、仕立ての細かい寸法をお店の人と相談しながら仕上げることができることです。
いわゆる「吊るし」で販売している浴衣と違って、伝統工芸品である本格浴衣は、必ず反物から仕立てることになります。(イージーオーダーと言って、部分的にミシンを使う仕立ての方法もあるのですが、お仕立て代はあまり変わることがないので当店ではお勧めしていません。)
流行ものと異なり、これから長く付き合って行くことになる浴衣です。痒い所に手が届くような、細かい採寸ができる店であることに越したことはありません。
街の呉服屋さんなら、お店で細かい採寸をして、仕立ての寸法について相談に乗ってくれるはずです。
きっと、あなたにぴったりな、着心地の良い浴衣に仕上げてくれるでしょう。
逆にデメリットは、
・店舗まで足を運ばなければならない
・自分と相性のいいお店選びに手間がかかる
といったことがあります。
3. 自分と相性のいい呉服屋さんの探し方
「自分と相性のいいお店選びに手間がかかる、か。やっぱり本格的な浴衣を買うのは簡単ではないのね・・・」
確かに、既製品の浴衣を扱うお店と比べたら、本格浴衣を購入できる呉服屋の数は少ないです。
でも、探し方のポイントがいくつかあるんです。
3-1. 自分と相性のいい呉服屋さんを探すポイント
まず、本格浴衣を扱う呉服屋を探すときは、自宅や職場から通いやすい場所を中心に探すといいでしょう。
浴衣を購入する際は、(宅急便を手配していなければ)仕立て上がりのときにもお店に行きますし、万が一寸法が合わない箇所があった場合でも、その場でお直しの手配が出来ます。
自宅や職場の最寄り駅や、通勤でとおる駅などで、「○○(駅名) 呉服屋」などと検索すると、きっといくつか呉服屋が見つかると思います。
見つかったら、ぜひ軽い気持ちでお店をのぞいてみてください。
初めは店に入りにくかったり、敷居が高そうに感じたりするかもしれません。
でも、多くのお店は気さくに接してくれますし、無理に売りつけようなんてお店はそうそうありません。なぜなら、呉服屋は信用商売なので、評判が悪い店ならとっくに潰れているからです。
いくつか店をのぞいてみれば、品揃えや接客態度、店の雰囲気など、「このお店なんかいいな」と思える、自分と相性のいい呉服屋がきっと見つかるでしょう。
そしてぜひ、長いお付き合いができる、自分のお気に入りの呉服屋を見つけてください。
長いお付き合いができれば、お店に台帳が残りますので、次に浴衣や着物を作るときは採寸に時間がかかりません。また、もし体型が変わって採寸し直すときでも、全部採り直す必要はありません。
3-2. こういうお店は要注意!
これはどちらが悪いということではありませんが、「なんとなくお店の人と合わないな」と感じたら、無理にそのお店で購入することはないと思います。
やはり「人」と「人」なので、相性は大事ですし、話しやすい方がこちら側の要望を伝えやすいものです。その方が、結果として満足のいく浴衣を作ることができます。
それから、一方的にお店の人が話をするような店は、こちら側の要望がうまく伝わらなかったりするので気をつけた方が良いでしょう。(お店の人も悪気がなく、そういう人柄なだけの場合もありますが、、、)
売りたいものを単純に売りつけてくる場合も少なからずありますのでお気を付けください。
親身になって相談に乗ってくれるかどうかが、お店選びのカギと言っていいでしょう。
4. ここが大事!大人の女性が似合う本格浴衣選びのポイント
自分と相性のいい呉服屋が見つかったら、いよいよ浴衣選びです。
4-1. とにかくたくさん見る
お店では、遠慮などまったくせずに、とにかくたくさんの反物を見せてもらうと良いでしょう。
既製品の浴衣と違って、決まった種類や似たような色づかい、柄のかぶりなどがないので、ご自身でイメージしたものがなかなか見つからないかもしれません。
でも逆に、予想もしなかったような素敵な反物が見つかったり、お店の人のお勧めで、思わずときめくような自分に似合う反物と巡り合えたりすることがあります。
実はこれが、本格浴衣選びの醍醐味なんです。
4-2. お店の人と仲良くなる
本格浴衣の反物選びは、ご自身の持つイメージを大事にしつつ、お店の人と相談しながら自分だけの浴衣を探していく、いわば「お見合い」のようなものです。
そして、お店の人は、ご縁を取り持ってくれる仲人(なこうど)のようなもの。
お店の人との信頼関係の構築が、良い浴衣選びのための大きなポイントとなります。
お店の人との信頼関係が構築されていないと、せっかくお店の人が提案してくれても、「なんだか売りつけられている」と感じてしまって、素敵な反物を見過ごしてしまった、なんてことになりかねません。
納得のいく浴衣選びには、お店の人と仲良くなることはとても重要なことなんです。
お店の人と仲良くなれば、お取り寄せなども気持ちよく対応してくれます。
もし、お店の人が「これはどうでしょうか?」と提案してくれたら、買う・買わないに関わらず、一度提案に乗ってみてください。
4-3. 着用シーンを具体的にイメージする
既製品の浴衣と違って、本格浴衣は、夏小紋(普段使いの着物)としても着用できます。
ちょっとかしこまったレストランや、ホテルなどドレスコードがある場所でも着られるので、着用の幅が広がります。
気に入った反物が見つかったら、着用シーンを具体的にイメージしてみると良いでしょう。
「こういう場では着てOK?」と、お店の人に聞けば親切に教えてくれると思いますので、ぜひ質問してみてください。
4-4. オーダーお仕立ての納期について
通常、本格浴衣のオーダーお仕立ての納期は、概ね1か月ほどとなります。
ただし、浴衣の場合、お召しいただく期間が着物より短いこと、仕立てのオーダーの時期が集中することから、繁忙期(6月~8月頃)は納期が少し遅れることがあります。
余裕をもって、納期は1か月半は見た方が良いでしょう。
繁忙期の前や後になれば、急ぎの対応も可能ですので、着用する時期と相談しながら早めに注文すると良いでしょう。
5. 新宿で大人の女性が似合う本格浴衣をつくるなら
ターミナル駅として圧倒的なアクセスの良さを誇るここ新宿には、全国チェーンの呉服屋、百貨店の呉服売り場、それから当店のような老舗の呉服屋と、様々なタイプの呉服屋さんがあります。
それぞれに良さがあり、一概にはいえませんが、大人の女性が似合う本格浴衣をつくるなら、やはり専門性の高い街の呉服屋さんでお買いものされるのが、アフターケアも含めて色々と相談に乗ってくれるのでお勧めです。
この夏、あなたがとびきりの浴衣に巡り合えることを心から願っています。
最後までお読みいただきありがとうございました。