亡くなった母が遺した大量の着物、どうしたらいい?「自分で着用する」「買取り業者に出す」「預かり(シェアリング)サービスを利用する」ポイントと注意点
「亡くなった母が遺した大量の着物が実家にあるけど、どうしたらいいんだろう…」
「せっかくだから自分で着てみようと思うけど、サイズは直せるの?」
「買取り業者に出したら高く売れたりするの?」
あなたは、お母様やお父様が遺された着物、または親から譲り受けた着物を、どのようにしたらいいかお困りになっていませんか?
そんなとき、解決策としては、「自分で着用する」「買取り業者に出す」「預かり(シェアリング)サービスを利用する」といった方法が考えられます。
大正12年創業、新宿・甲州屋呉服店の四代目。
“新宿通りの若旦那” こと、 志村 郷親(シムラ クニチカ)と申します。
「和服をもっと身近に。」をコンセプトに、世界に誇れる和文化を継承、広めるために、情報発信メディア「和服東京」を通じて様々な企画をプロデュースするとともに、日々精力的に情報を発信しています。
このページでは、お母様やお父様から引き継いだ着物の扱い方、活用方法について、ポイントと注意点を中心にお伝えしようと思います。
1. まず、着物の状態を確認する
お母様やお父様の着物を引き継いだら、まずは着物の状態を確認してみましょう。
普段からほとんど着物を着ることがなく、タンスの肥やしになっていたなら、綺麗な状態のままであることが多いでしょう。
一方で、お母様やお父様が普段から着物をよく着ていた人であれば、
- 生地のへたり具合はどうか?
- シミや汚れはないか?
- サイズは小さすぎないか?
- サイズを大きく出せる余力はあるか?
といったことを確認します。
加えて、特に買取り業者に出すことを検討している場合に気を付けたいのは、
- お母様やお父様のご身長やお体格
- 無形文化財等、希少性の高い技術が施されている着物であれば、それを証明するものが保管されているかどうか(ラベル等)
になります。
標準的なサイズ、かつ、希少性の高い着物の場合は、買取り業者に高く買ってもらえる可能性が高くなります。
2. 着物の扱い方、活用方法について
では、お母様やお父様が遺された着物は、どのように扱い、どのように活用すればよいのでしょうか。
2-1. 自分で着用する(基本編)
まずは、ぜひご自分で着用することを考えてみてください。
(これが恐らく、お母様やお父様が一番望まれている活用方法かと思います。)
ご自分で着用される場合のチェックポイントは、
- 自分の身長や体格が、お母様(お父様)に近いか?
- お母様(お父様)が着物をよく着られていた場合、保管状態がどうなっているか?
- シミや生地の劣化がどのくらいあるか?
といった点になります。
もし、ラッキーなことに、ご自身の身長や体格がお母様(お父様)とそれほど変わらないようでしたら、(保管状態にもよりますが)そのまま着用することができます。
メンテナンスについても、基本的に生洗い(丸洗い)だけで大丈夫です。
保管状態が比較的良くてシミやへたりが見当たらない場合でも、湿気を吸っていたり、目に見えない微妙なシミや汚れがあったりすることが通常ですので、「洗い」だけは必ず行うと良いでしょう。
そのまま放っておいて、万が一、目に見えないシミや汚れがあった場合、後でシミ等が浮き出てくることがあります。
これは「黄変(おうへん)」と言いまして、黄色いシミや斑点(ホシとも言います)が浮き出てくると、落とすのが容易ではなくなります。
(黄変までいくと、完璧には落ちない場合がほとんどで、他のリペア方法を検討する必要が出てきます。)
また、もしご自身の身長や体格がお母様(お父様)と大きく異なる場合は、同じ「洗い」でも、一度着物を全て解いて、生地を一枚板に張り付けて洗う「洗張り(あらいはり)」という方法で洗い、新たにご自身のサイズに仕立て直すことになります。
ちなみに、着物の場合は、お洋服よりもサイズ感はアバウトで大丈夫です。
「少しサイズが違うかな」と思っても、「洗張り」、「仕立て直し」までやらなくて済む場合がありますので、専門の呉服屋さんに一度ご相談されることをおススメします。
2-2. 自分で着用する(応用編)
次は、「自分で着用する」の応用編です。
お母様やお父様が遺された着物が、
- 「生地がしっかりしていて良いものなんだというのは何となく分かるけど、ちょっと色味が今の時代の色味とは違う気がする」
- 「柄遣いが地味すぎて、私には似合わないような気がする」
- 「着られるなら着たいけど、もう一味欲しかった」
など、惜しいお好みのミスマッチがあった場合、色だけを染め替えたり、柄足しをしてもう少し華やかな柄遣いにしたりすることができます。
染め替えには、①生地の地色をそのまま活かしてその上から色を載せて新たな色味を創り上げていく「色掛け(いろかけ)」、②一度色抜きをしてから新たな色に染めていく「染め替え」と、大きく分けて二通りあります。
どちらの手法で色を替えるかは着物の種類や希望の色味によって変わってきますので、専門の呉服屋さんで色見本を見ながら相談されると良いでしょう。
柄足しは、既存の着物の柄遣いを活かしつつ、追加で柄を描いてもらう方法です。
どんな柄遣いが好みなのか、ざっくりと呉服屋さんに希望を伝えれば、あとは職人さんが全体のバランスを考えながら描いてくれます。
「こんな方法もあるんだ」と覚えておいて損はありませんよ。
2-3. 買取り業者に出す
ご自身で着る予定はなく、ご親戚やお友達などにも貰い手がいらっしゃらない場合は、残念ながら買取り業者に出すという選択肢も入ってきます。
なぜ、「残念ながら」という回りくどい言い方をしたかと言いますと、安易に買取り業者に出してしまって、後でがっかりしてほしくないからです。
着物の買取りについて、次のような誤解をされている方が結構いらっしゃいます。
- 「お母さんがかなりお金をかけて買い集めていたものだから、きっと高く買い取ってもらえるはず」
- 「購入していたお店が買取りをしてくれるのだから、きっと高く買い取ってもらえるはず」
- 「希少性の高いものだから、きっと高く買い取ってもらえるはず」
など、キーワードは、「高く買い取ってもらえるはず」です。
ところが、着物のリサイクル市場というのは、某テレビ番組の「なん〇も鑑定団」のような骨董品市場ではなく、あくまで衣類のリサイクル市場にすぎません。
(どちらかといえば、モー〇オフやトレ〇ャーファクトリーのような洋服のリユース、リサイクルに近いです。)
確かに、稀にものすごく希少価値が高く、買取価格を押し上げる逸品がないわけではありませんが、それは稀中の稀で、仮に高い金額が付いたとしても、購入時の値段に遠く及ばない金額になるでしょう。
状態が未使用に近いような状態であっても、サイズが小さければほとんど値段が付かないことも多いです。
また、「重要無形文化財」のような逸品であっても、ラベルが無いと、認めてくれないことがほとんどです。
「自分で着ることがない。周りにも着る人もいない。残念ながら処分するほかないから、買取り業者に出そう」と考えられた方が、がっかりしないで済むかもしれません。
2-4. 着物の「預かり(シェアリング)サービス」を利用する
最後に、最近広がってきた着物の「預かり(シェアリング)サービス」をご紹介します。
ここまで挙げた活用方法に当てはまらない、もしくは、買取り業者に出すのには抵抗がある、という方は、このように考えられるのではないでしょうか。
- 「自分は着ることはないけど、かといって安く売って処分するのには抵抗がある」
- 「買取り業者に出すのは何となくもったいない気がするけど、家に保管するスペースがない」
- 「今は着る予定はないけど、将来着ることになるかもしれない…」
そんなときは、着物を所有しながら有効活用する方法の1つとして、着物の「預かり(シェアリング)サービス」の利用をぜひ検討してみてください。
ここで言う預かり(シェアリング)サービスとは、所有する着物を専門店が預かる(ケースによっては専門店が預かった着物を第三者に貸し出す)サービスになります。
預かり(シェアリング)サービスのメリットは、
- 着物をお店に預けるので、居住スペースに余裕ができる
- 自身で着る予定ができた場合は、いつでも戻して着用することができる
といった点になります。
つまり、自分で着物を所有しながら、普段利用しないときはサービスを取扱うお店に預けてクローゼット代わりにして、着る機会があるときは戻して自分で使うことができる、とても便利な方法になります。
なお、預り(シェアリング)サービスには、預かりが「有料」の場合と、「無料」の場合があります。
「有料」の場合は、単純にタンスやクローゼット代わりに着物や帯を預かってくれるサービスになります。
「無料」の場合は、預けた着物等を、シェアリングサービスとしてお店が第三者に貸し出すことが多いです。
(第三者に貸し出す場合、レンタル料金が発生すれば、所有者として手数料がもらえることがあります。)
預かり(シェアリング)サービスであれば、着物を定期的に風にさらすことになりますので、タンスに仕舞いっ放しにするより、劣化の防止になります。
頻繁に着用することがなかったり、買い取り業者に出すには抵抗があったりする場合は、このようなサービスを利用するのも手だと思います。
> 新宿・甲州屋呉服店の着物の預かり・シェアリングサービス、「えにし」
3.「自分で着用する」「預かり(シェアリング)サービスを利用する」場合、相談はどこにする?
買取り業者に出す場合は、ネットで「着物 買取り」と検索すれば、多くの業者の情報が出てくるでしょう。
では、「自分で着用する」、「預かり(シェアリング)サービスを利用する」場合、どこに相談すればいいのでしょうか。
相談の候補先としては、大きく分けて、
- 百貨店の呉服売り場
- リサイクル着物チェーン店
- 専門店(街の呉服屋さん)
の3通りになるかと思います。
3-1. 百貨店の呉服売り場
もうすでにあなたは、「着物 デパート 百貨店」などと検索して、百貨店のウェブサイトをチェックされていたかもしれませんね。
メリットは、着物に限らず何かと百貨店には買いもので足が向くことが多いことから、買い物ついでに寄りやすいことが考えられます。
また、一般的に売り場面積が広く、開放的で入りやすい店構えであることが多いのが特徴です。
逆にデメリットは、
- 昔の百貨店と違って、店員の着物の専門知識が必ずしも豊富でない
- 「お手入れ」以外の活用方法の引き出しがほとんどない
ことなどが挙げられます。
3-2. リサイクル着物チェーン店
では、着物のレンタルや販売、買取りを行っているリサイクル着物のチェーン店はどうでしょう。
メリットは、駅ビルやショッピングモールなどにテナントとして入っていることが多いく、着物に限らず何かと買いもので足が向くことが多いことから、買い物ついでに寄りやすかったり、仕事帰りに寄りやすかったりすることが考えられます。
また、百貨店と同様、一般的に売り場面積が広く、開放的で入りやすい店構えが多いのが特徴です。
逆にデメリットは、
- 店員の皆が皆、着物の専門知識が必ずしも豊富でない
- 「お手入れ」「仕立て直し」といった活用方法の引き出しがないことがほとんどのため、結局買取りを勧められることが多い。
といったことが挙げられます。
3-3. 専門店(街の呉服屋さん)
「自分で着用する」、「預かり(シェアリング)サービスを利用する」場合は、「街の呉服屋さん」などの専門店に相談するのが主流かと思います。
やはりメリットは、着物のスペシャリストなので、着物に関する疑問点や不明点に親身になって相談に乗ってくれることでしょう。
また、一度「お手入れ」、「お直し」、「預かり(シェアリング)サービス」などを利用した後は、お得意先様になりますので、その後もオーダーメイド型の活用の提案を受けられると思います。
もちろん、「お手入れ」や「仕立て直し」についても解決策の引出しが多くありますので、様々な活用の相談が気軽にできる点も見逃せません。
またもう一つ、「仕立て直し」のケースでとても重要なメリットがあります。
それは、街の呉服屋さんなら、お店で細かい採寸をして仕立ての寸法についても相談に乗ってくれます。
加えて老舗の呉服屋さんなら、腕のいい職人さんと長年取り引きされていると思いますので、お客さんに合ったジャストフィットの寸法で、着心地のいい着物に仕立てることができるでしょう。
お父様やお母様から引き継いだ本格的な着物は、流行りものと異なり、きっと長く付き合っていけるものです。
痒い所に手が届くような、細かい相談ができる店であることに越したことはありません。
きっと、あなたにとって満足度の高い活用方法に巡り会えると思います。
活用方法が明確に決まっていないなら、一度街の呉服屋さんに相談してみると良いでしょう。
逆にデメリットは、
- 自宅の近くに店舗がない場合、遠方まで足を運ばなければならない
- 自分と相性のいいお店選びに手間がかかる
- 買取りサービスの対応がないことが多い
- 「預り(シェアリング)サービス」を取り扱っている店は限られる
といったことが挙げられます。
4. 自分と相性のいい呉服屋さんの探し方
「自分と相性のいいお店選びに手間がかかる、か。
やっぱり気軽に何でも相談できるような呉服屋さんを探すのは簡単じゃないのよね…」
確かに、百貨店やリサイクル着物チェーン店と比べたら、呉服屋さんの数は少ないです。
でも、探し方のポイントがいくつかあるんです。
4-1. 自分と相性のいい呉服屋さんを探す際のポイント
まず、呉服屋さんを探すときは、自宅や職場から通いやすい場所を中心に探すといいでしょう。
「お手入れ」、「仕立て直し」、「預り(シェアリング)サービス」などを利用する場合は、(宅急便を手配していなければ)仕上がりや仕立て上がりなどのタイミングでお店に行くことになりますし、預けたり引き取ったりと頻繁に行う場合は、なるべく自宅から近いお店が良いでしょう。
(仕立て直しの場合、その場で確認して、万が一サイズが合わなかったときはお直しの手配をすることになります。)
自宅や職場の最寄り駅や、通勤で通る駅などで、「○○(駅名) 呉服屋」などと検索すると、きっといくつか呉服屋さんが見つかると思います。
そして見つかったら、ぜひ軽い気持ちでそのお店を訪ねてみてください。
初めはお店に入りにくかったり、敷居が高そうに感じたりするかもしれません。
でも、多くのお店は気さくに接してくれると思いますし、無理な提案をしようなんてお店はそうそうありません。
なぜなら、呉服屋は信用商売なので、評判が悪い店ならとっくに潰れているからです。
いくつか店をのぞいてみれば、品揃えやサービスの充実度、接客態度、店の雰囲気など、「このお店なんかいいかも」と思える、自分と相性のいい呉服屋さんがきっと見つかるでしょう。
そしてぜひ、長いお付き合いができる、自分のお気に入りの呉服屋を見つけてください。
長いお付き合いができればお店に台帳が残りますので、次回、「お手入れ」や「仕立て直し」をする際や、新しい着物や浴衣を作る際に、採寸のための時間がかかりません。
また、もし体型が変わって採寸し直すときでも、全部採り直す必要はありません。
4-2. こういうお店は要注意!
もし、街の呉服屋さんに入ってみて、「なんとなくお店の人と合わないな」と感じたら、無理にそのお店を選ぶことはないと思います。
やはり最終的には「人」と「人」なので相性は大事ですし、話しやすい方がこちら側の要望を伝えやすいものです。
その方が、結果として満足のいく活用の提案が受けられると思います。
それから、一方的にお店の人が話をするような店は、こちら側の要望がうまく伝わらなかったりするので気をつけた方が良いかもしれません。
(お店の人も悪気がなく、そういう人柄なだけの場合もありますが…)
また、お店にとって都合のいい提案をゴリ押ししてくる場合も少なからずありますのでお気を付けください。
あなたのために親身になって相談に乗ってくれるかどうかが、お店選びのカギと言っていいでしょう。
5. 新宿で、お母様やお父様が遺された大量の着物の扱い方や活用について相談をするなら
ターミナル駅として圧倒的なアクセスの良さを誇るここ新宿には、全国チェーンの呉服屋、百貨店の呉服売り場、それから当店のような老舗の呉服屋と、様々なタイプの呉服屋さんがあります。
それぞれに良さがあり、一概にはいえませんが、お母様やお父様が遺された大量の着物の扱い方や活用について相談をするなら、やはり知識も引出しも多い専門性の高い街の呉服屋さんで相談されるのが、アフターケアも含めてお勧めです。
あなたのお悩みが解決することを心から願っています。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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