子供の入学式・卒業式で着物を着たいお母さん必見!レンタル?購入?お手入れ・お直し?ポイントと注意点をプロが解説
「一生に一度の子供の晴れ舞台。私も着物を着ておめかししたい!」
「子供の入学式や卒業式に出席するとき、どんな種類の着物を着ればいいの?」
「昔買った着物があるけど、色が派手かも?周りから浮かないか心配…」
「親が持っている着物を借りたいけど、サイズが合わない…。どこで直せばいいの?」
あなたは、お子さんの入学式や卒業式に着物を着たいと思っていても、どうやって用意すればいいかわからないし、面倒!難しい!と思っていませんか?
そもそもどんな種類の着物が入学式・卒業式に相応しいのか、それをどこで、どうやって用意するのか。
そのポイントさえつかんでしまえば、入学式・卒業式に着物を着て出席することは、決して難しいことではありません。
大正12年創業、新宿・甲州屋呉服店の四代目。
“新宿通りの若旦那” こと、 志村 郷親(シムラ クニチカ)と申します。
「和服をもっと身近に。」をコンセプトに、世界に誇れる和文化を継承、広めるために、情報発信メディア「和服東京」を通じて様々な企画をプロデュースするとともに、日々精力的に情報を発信しています。
このページでは、子供の入学式・卒業式で着物を着たいお母さん向けに、レンタル、購入、お手入れ・お直しのポイント、注意点についてお伝えしようと思います。
1. 子供の入学式・卒業式に相応しい着物の種類と特徴
まず、すでに何点か着物をお持ちの方の場合です。
久しぶりにタンスの中を確認したら、
「どの着物が入学式・卒業式に着ていいものなのかわからない」
と思ってしまうかもしれません。
もちろん、お持ちの着物がひとしきり揃っている場合の話になりますが…。
この場合、着物の種類と特徴がわかれば、どの着物・帯が入学式や卒業式に来て行ってもOKなのか、それともNGなのか、すぐに判断することができます。
1-1. 附下(つけさげ)
附下(つけさげ)は、主に綸子(りんず)という絹織物の一種で、ツヤがあるやわらかい生地が特徴で、染めや刺繍の柄が決まっている場所に描かれている着物をいいます。
柄が入る決まった場所というのは、以下の部分になります。
- 上前衿(うわまええり)、胸元(むなもと)
- 左内袖(ひだりうちそで)
- 右外袖(みぎそとそで)
- 右肩(みぎかた)
- 上前衽(うわまえおくみ)、上前見頃(うわまえみごろ)
- 後見頃(うしろみごろ)
聞きなれない用語があると思うので、補足しますね。
上前(うわまえ)は、着物を着た(体に巻きつけた)ときの重なった部分の上側(左側)になります。
衿(えり)は、文字どおり、襟(えり)と同じ意味ですが、着物の場合は、上半身の部分の真ん中の細い生地の部分のことをいいます。
内袖(うちそで)・外袖(そとそで)は、袖の振りの部分を正面から見たときに、前の部分が内袖、後ろの部分が外袖と呼ばれます。
これは、腕を下したときに、前の部分が内側に隠れ、後ろの部分が外側を向くからです。
衽(おくみ)と見頃(みごろ)は、帯を境にした下半身の部分の生地で、真ん中の細い部分が衽で、横と後ろの太い生地が見頃になります。
ちなみに、附下には、カジュアルで細かい柄があしらわれている「小紋寄りの附下」(附下小紋とも言います)タイプのものと、縁起のものの柄遣いで金の箔や刺繍が豪華に施された「訪問着寄りの附下」タイプがあります。
同じ附下とはいえ、「小紋寄りタイプ」の附下は基本的にはオシャレ着になりますので、基本的には、入学式や卒様式には「訪問着タイプ」の附下を着用してください。
ただし、「小紋寄りタイプ」でも、友禅染めなど豪華目の柄遣いのものは着てOKの場合があります。
心配な場合は、馴染みの呉服屋さんやお近くの呉服屋さんにご相談されることをお勧めします。
1-2. 訪問着(ほうもんぎ)
附下(つけさげ)をさらに豪華にした、全体的に柄があしらわれている着物を訪問着(ほうもんぎ)といいます。
特徴は、
- 附下よりも広範囲にわたって豪華な柄遣いが施されている
- 衽と見頃の境目の縫い代の部分にも柄が合わさっており、一枚絵のようになっている
点になります。
厳密に言いますと、附下(つけさげ)は、決まった場所に柄が施されているから附下(つけさげ)と呼ばれているのですが、それが豪華な柄遣いの場合は、「訪問着」と一括りにする人もいます。
柄遣いによって分ける人もいるので、ここではあえて分けてご紹介しています。
「訪問着は、附下の派手版」と思ってもらえれば、すぐに見分けられると思います。
つまり、ツヤがあって柔らかい生地に、金の箔や刺繍があるものが、フォーマルもののポイントというわけですね。
1-3. 無地紋付(むじもんつき)
最後にもう一つ、お茶席などで着用する無地紋付(むじもんつき)も選ぶことができます。
(附下(つけさげ)や訪問着(ほうもんぎ)と違って、なかなかチョイスすることが少ないかとは思いますが)
「無地」とはその名のごとく、染めや刺繍といった柄がまったくなく、一色、もしくは、ぼかしで染めてある着物になります。
反物によっては、地模様が織り込まれているものがあるので、柄がまったくないかと言うとそうではない場合もあります。
作る際に紋を入れて染めて、綴帯(つづれおり)など格調高い帯とあわせることで、フォーマルの場にお出かけできるものになります。
ちなみに、男性(お父さん)の正装の黒紋付羽織袴の着物も、分類としては無地の着物ということになります。
2. 入学式・卒業式に着て行く着物はどうやって用意する?レンタル?購入?お手入れ・お直し?相談はどこにする?
では、入学式・卒後式に着ていく着物は、どうやって用意すればいいのでしょうか?
用意する方法としては、レンタル、購入、お手入れ・お直しが考えられると思います。
では、そういった相談は、どこにすればいいのでしょうか?
相談先は、大きく分けて、
- お母様(ご祖母様)
- レンタル衣装専門店
- 百貨店の呉服売り場や、チェーン店
- 専門店(街の呉服屋さん)
の4通りがあるかと思います。
2-1. お母様(御祖母様)
あなたが着物を持っていなかった場合でも、もし、お母様やご祖母様が着る方だったり、かつてはよく着ていたような方だったりする場合、処分などしていなければ、そのまま持っているケースがあります。
そのような場合は、ぜひ相談してみると良いでしょう。
お母様(御祖母様)と体格があまり変わらない場合は、そのまま着られることもよくあります。
もし寸法を変える必要があった場合でも、着物を着ていた方の場合、馴染みの専門店(呉服屋さん)をご存じだったりする場合があります。
メリットは、なんといっても、コストがかからない、かかるとしても、洗いやシミ抜きぐらいで済む可能性が高いという点でしょう。
逆にデメリットは、
- 色柄が昔よく出回っていた着物が多い為、必ずしも好みの色柄遣いのものではないことがある
- 着ないまま長期間タンスの中にしまいっ放しにしている場合、落ちない汚れや傷みがあることがある
- サイズが合わない場合は、仕立直し等の対応が必要になる
などがあります。
なお、お手入れやお直しは、思いのほか納期が必要なケースがあります。
馴染みの専門店に相談が必要な場合は、予定日から数か月前など、余裕を持って相談するようにしましょう。
2-2. レンタル衣装専門店
普段から着物とほとんど接点がない方は、レンタルでも全然良いと思います。
レンタル先の一つである、レンタル衣装専門店は、商業施設等にテナントとして入っていたり、繁華街に路面店として出店していたり、インターネット通販サイトとして出店していたりします。
メリットは、リアル店舗の場合は商業施設や繁華街にはお買いもので足が向くことが多いので、お買い物ついでに寄りやすいといった点が考えられますね。
インターネット通販サイトの場合は、なんといってもネットにアクセスできる場所であればどこでも注文予約することができる点が便利です。
逆にデメリットは、
- レンタル専門店の場合、和装で力を入れているジャンルは成人式の振袖や、卒業式の袴であることが多いので、親御さん対象の訪問着や附下といった商品の種類は限定される場合が多い
- ネット店舗の場合は、価格の安さを重視している店舗がほとんどであるため、クオリティが低い商品が多い
といったことがあると思います。
2-3. 百貨店の呉服売り場、着物チェーン店
百貨店の呉服売り場や着物チェーン店でも、レンタルや購入、お手入れの相談は出来るでしょう。
メリットは、百貨店や着物チェーン店が出店している商業施設には何かとお買いもので足が向くことが多いので、やはりお買い物ついでに寄りやすいといった点が考えられますね。
また、百貨店の呉服売り場や着物チェーン店は、一般的に売り場面積が広く、開放的で入りやすい店構えだったりすることから、広い分だけ商品のバリエーションが多いのも特徴です。
逆にデメリットは、
- 昔の百貨店と違って、店員の着物に対する専門知識が必ずしも豊富でない
- 売上ノルマが課されていることが多く、何だかんだで「新品購入」の提案を受けやすい
- 百貨店の呉服売り場の場合、レンタルに対応していないことがある
といった点があります。
2-4. 専門店(街の呉服屋さん)
附下や訪問着といった本格的な着物になると、お手入れ・お直しや購入の相談は、今でも「街の呉服屋さん」などの専門店にするのが主流かと思います。
やはりメリットは、着物のスペシャリストなので、お客様のお手持ちの着物の状態や着用目的を的確に把握してくれて、必要に応じた最適な解決策について提案を受けられることでしょう。
また、「お手入れ」や「お直し」についての解決策の引き出しが多くありますので、様々なバリエーションの提案を受けることができます。
「購入」という話になった場合、店頭に在庫がなくても、似合いそうなものを取り寄せてくれたり、細かい対応が可能だったりする場合が多いです。
またもう一つ、とても重要なメリットがあります。
それは、街の呉服屋さんなら、仕立ての細かい寸法までお店の人と相談できるので、単に「洗い」や「シミ抜き」といった相談だけでなく、「染め替え」や「柄足し」、「仕立て」まで、トータルで相談できることです。
街の呉服屋さんなら、お店で細かい採寸をして仕立ての寸法について相談に乗ってくれますし、洗いや染め替え、裏地交換も、なるべく着物にやさしい方法を提案してくれるでしょう。
また、老舗の呉服屋さんなら、腕のいい職人さんと長年取り引きされていると思いますので、お客さんに合った寸法で、着心地のいい着物に仕立てることができると思います。
本格的な着物というのは、これから長く付き合っていくものです。
痒い所に手が届くような、細かい相談ができる店であることに越したことはありません。
きっと、あなたにとって満足度の高い相談相手となってくれるでしょう。
逆にデメリットは、
- 自宅の近くに店舗がない場合、遠方まで足を運ばさなければならない
- 自分と相性のいいお店選びに手間がかかる
- レンタルの対応をしている呉服屋さんはほとんどない
- 在庫に限りがあるので、取り寄せを含めると時間がかかる場合がある
といった点があります。
3. 自分と相性のいい呉服屋さんの探し方
「自分と相性のいいお店選びに手間がかかる、か。
やっぱり気軽に何でも相談できるような呉服屋さんを探すのは簡単ではないよね…」
確かに、レンタル衣裳専門店や百貨店、着物チェーン店と比べたら、本格着物を扱う呉服屋さんの数は少ないです。
でも、探し方のポイントがいくつかあるんです。
3-1. 自分と相性のいい呉服屋さんを探す際のポイント
まず、呉服屋さんを探すときは、自宅や職場から通いやすい場所を中心に探すといいでしょう。
「お手入れ」や「お直し」の相談をする際は、(宅急便を手配していなければ)仕上がりや仕立て上がりのときにお店に行くことになりますし、万が一サイズが合わなかったり、染め替えなどで色味の確認があったりする場合は、その場で確認したりお直しの手配をすることになります。
自宅や職場の最寄り駅や、通勤で通る駅などで、「○○(駅名) 呉服屋」などと検索すると、きっといくつか呉服屋さんが見つかると思います。
そして見つかったら、ぜひ軽い気持ちでお店をのぞいてみてください。
初めは店に入りにくかったり、敷居が高そうに感じたりするかもしれません。
でも、多くのお店は気さくに接してくれると思いますし、無理に着物を売りつけようなんてお店はそうそうありません。
なぜなら、呉服屋は信用商売なので、評判が悪い店ならとっくに潰れているからです。
いくつか店をのぞいてみれば、品揃えや接客態度、店の雰囲気など、「このお店なんかいいかも」と思える、自分と相性のいい呉服屋さんがきっと見つかるでしょう。
そしてぜひ、長いお付き合いができる、自分のお気に入りの呉服屋を見つけてください。
長いお付き合いができればお店に台帳が残りますので、次回、「お手入れ」や「お直し」をする際や、新しい着物や浴衣を作る際に、採寸のための時間がかかりません。
また、もし体型が変わって採寸し直すときでも、全部採り直す必要はありません。
3-2. こういうお店は要注意!
これはどちらが悪いということではありませんが、「なんとなくお店の人と合わないな」と感じたら、無理にそのお店を選ぶことはないと思います。
やはり最終的には「人」と「人」なので相性は大事ですし、話しやすい方がこちら側の要望を伝えやすいものです。
その方が、結果として満足のいくレンタル、購入、お手入れ・お直しの相談ができると思います。
それから、一方的にお店の人が話をするようなお店は、こちら側の要望がうまく伝わらなかったりするので気をつけた方が良いかもしれません。
(お店の人も悪気がなく、そういう人柄なだけの場合もありますが…)
また、売りたいものを単純に売りつけてくる場合も少なからずありますのでお気を付けください。
あなたのために親身になって相談に乗ってくれるかどうかが、お店選びのカギと言っていいでしょう。
4. 新宿で本格着物のレンタル、購入、お手入れ・お直しの相談をするなら
ターミナル駅として圧倒的なアクセスの良さを誇るここ新宿には、全国チェーンの呉服屋、百貨店の呉服売り場、それから当店のような老舗の呉服屋と、様々なタイプの呉服屋さんがあります。
それぞれに良さがあり、一概にはいえませんが、本格的な着物・浴衣・帯のレンタル、購入、お手入れ・お直しの相談をするなら、やはり知識も引出しも多い専門性の高い街の呉服屋さんに相談されるのが、アフターケアも含めてお勧めです。
あなたが快適な着物生活をお送りできることを心から願っています。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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